酸蝕症
- HOME
- 酸蝕症
炭酸飲料やフルーツで歯が溶ける?

「コーラで歯が溶ける」という話を聞いたことがありますか?
これは全く根拠のない都市伝説というわけではなく、炭酸飲料や柑橘類、酢などの食べ物や飲み物で歯が溶けたり虫歯になりやすくなる
「酸蝕症(さんしょくしょう)・酸蝕歯(さんしょくし)」といわれる歯の病気です。
あらゆる年齢で起きる可能性があり、現代では、4人に1人が、何らかの形でこの酸蝕症にかかっているといわれています。
酸蝕症のメカニズム

酸性とアルカリ性はpH(ペーハー)という単位で表されます。pH7が中性で、これより低いと酸性で、数値が低いほど酸性度が高くなります。
またpH7より高いとアルカリ性です。酸っぱい食べ物や飲み物の多くは酸性です。
歯は、外側が硬いエナメル質、内側が柔らかい象牙質という組織でできています。これらは酸に弱く、エナメル質はpH5.5以下で、象牙質は、より中性に近いpH6くらいでも溶けだします。
口の中は、普段はほぼ中性ですが、酸性のものが入ると一時的に酸性になり、歯の表面が溶け始めます。しかし、唾液が口の中の酸を洗い流して中性に戻り、唾液の中のカルシウム成分が歯の表面に取り込まれて、元に戻っていきます。
通常は、この唾液の働きによる脱灰と再石灰化のバランスが保たれて、歯が溶けないでいるのです。
ですが、現代は、冷凍技術や流通の進歩、コンビニや自販機の普及で、酸性度の高い新鮮なフルーツや炭酸飲料などが、1年中、いつでも簡単に手に入ります。
また、健康志向の高まりによって、酸性度の高い酢をそのまま飲んだり、レモンやグレープフルーツなどの柑橘類を毎日食べる方もいます。
その他、ストレスによって起きる胃炎や逆流性食道炎などの病気でも、口の中の酸性度が高まります。

このように、昔と比べて身の回りに、歯を溶けやすくする酸性のものが溢れかえっていて、口の中が酸性になっている時間が長く、歯が長時間、高頻度に酸にさらされています。そのため、唾液による中和と再石灰化が間に合わなくなって、歯の吸収が過剰に進んだり、歯ブラシによる摩擦や歯ぎしりで歯が削れやすくなったり、虫歯が進行しやすくなることがあります。これが酸蝕症です。
歯の表面のエナメル質が吸収して、その下の柔らかい象牙質が露出すると、酸蝕症が急速に進行し、進行し過ぎると歯が小さくなって、詰めものや被せものでの治療も難しくなります。そのため、できるだけ初期のうちに気づいて対処することが重要です。
酸蝕症の症状

酸蝕症は、最初はなかなか自覚症状がありません。ですが、進行すると歯が短くなったり、歯ぐきから上の部分がほとんどなくなって、顔の形が変わってくることもあります。
また、虫歯がないのに歯がしみる知覚過敏が広範囲に起きたり、なかなか治らなかったり、噛むと歯が全体的に痛くなることも。
その他、歯の表面が柔らかくなるため、虫歯になりやすくなることもあります。綺麗に磨いているのによく虫歯になったり、虫歯がたくさんできたり、再発を繰り返すなど、進行が早い場合は、酸蝕症が原因のひとつとなっていることがあります。
酸蝕症が疑われるケース
虫歯はよく、歯と歯の間の見えにくい部分から発症し、黒い穴が空いてきます。
これに対して酸蝕症は、歯の表面が白いまま平らに凹み、同時に複数の歯に進行します。
また、奥歯の噛む面がカップ状に凹んだり、前歯の裏側が薄く平らになったり、金属のつめ物が歯から浮き上がって、とれやすくなることも。
その他、前歯が薄くなって先端が透けたり、表面がザラザラになって着色したり、白く濁ったり、ヒビが入ることもあります。
酸蝕症の原因
飲み物

飲み物では、炭酸も酸のため、コーラやサイダーなどの炭酸飲料、特に砂糖入りの炭酸飲料がハイリスクです。また、ペリエなどの甘くない炭酸水でも、飲み過ぎると酸蝕症になることがあります。
オレンジジュースなどの柑橘系飲料や野菜ジュース、ビール、チューハイ、日本酒、ワインなど、お酒の多くも、酸性度が高い飲み物です。スポーツドリンクは酸っぱくなくても酸味料の入っているものが多く、夏などに水分補給のためによく飲んでいると、季節性に酸蝕症になることがあります。毎年暑くなると歯がしみる方は、酸蝕症が原因かもしれません。
その他、酢も酸性度が高いため、健康法として黒酢などを飲むことも、歯にとってはハイリスクです。特に、酸っぱいため一気に飲めず、前歯の方に溜めてちびりちびり飲んでいると、歯が長時間、酸にさらされています。
食べ物

食べ物では、レモンやグレープフルーツ、オレンジなどの柑橘類が酸性度が高く、これらを毎日丸かじりしていると、前歯に影響が出やすくなります。
また、トマトや梅干し、ポン酢なども酸性度が高いです。野菜類にも多く含まれているビタミンCも酸性です。野菜だけで栄養を取ろうとすると量が多くなり、ドレッシングの多くも酢を含んでいるため、極端な菜食主義の方も酸蝕症になることがあります。
これらの飲食物は、ちょっとでも口にしてはダメ、というわけではなく、高頻度、長時間の歯への接触がリスクとなります。
そのため、酸蝕症が疑われる場合は、量や食べ方・飲み方などに注意しましょう。
薬

ビタミンCサプリ、イソジン、リステリンなどのうがい薬も、実は酸性度が高く、身体に良い物も、使用する頻度が高いと酸蝕症の原因となってしまいます。
身体の病気

逆流性食道炎、慢性胃炎、拒食症、過食症などの病気や、つわりがひどい場合、嘔吐などによって、強力な酸である胃液が口の中に逆流してくるため、酸蝕症が重度になることがあります。
また、シェーグレン症候群という唾液が少なくなる病気も、唾液の中和力が弱まるため、虫歯や酸蝕症になりやすくなります。
酸蝕症の対策
食生活

酸蝕症の対策としては、まず口の中が酸性になっている時間を短くすることが大切です。唾液による酸の中和には、個人差がありますが、3~30分くらいかかるため、酸性のものを短時間に何度もダラダラと飲食していると、唾液による中和が間に合わず、口の中が酸性のままの状態がずっと続くことになります。
そのため、仕事中や勉強中などに、炭酸飲料などを頻繁に飲む方は、毎日飲んだり、小刻みにずっと飲み続けるチビチビ飲みを止め、一度飲んだら1~2時間は空けるなど、時間を区切って飲むようにしましょう。
また、ペットボトルから直接飲むのではなく、ストローなどを使えば、飲み物が直接喉の奥にいくため、歯への酸の接触を減らせます。
水・お茶・麦茶・紅茶(レモンティー以外)・牛乳・豆乳などは酸性度が低い飲み物のため、酸蝕症の方は、これらに替えてみるのもいいでしょう。
特に、スポーツ中は体の中の水分が減って口の中が乾きやすくなり、唾液が減って酸が中和されにくくなるため、スポーツ飲料のような酸性度がそれほど高くないものでも影響が出やすいので、水や麦茶などに代えてみてください。
また、酢を飲んでいる方は、飲んだ後すぐに、水やお茶で口をよくすすぐか、カプセル入りのものにしていただくと、酸蝕症を予防できます。
乳幼児・小児の対策

乳歯や生えたての永久歯は軟らかく、より酸に溶けやすいので、特に注意する必要があります。りんごジュースも意外と酸性度が高いため、子どもにフルーツジュースを飲ませるなら、カルシウム添加のものにしてみてください。また、哺乳瓶よりもストローマグなどの方が、乳歯への酸の接触を減らせます。
特に、寝ている時は唾液の量が昼間の10分の1くらいになり、酸が中和されにくく、より虫歯になりやすくなるため、赤ちゃんの寝かせつけの飲み物は麦茶などにして、できるだけ甘い物の習慣をつけさせないようにしましょう。
また大人の方も、お酒を飲みながら寝てしまう寝酒をしていると、口の中の酸性度が高いままになってしまうため、寝る前に歯を磨くか、よくうがいをするようにしましょう。
中和力を補助するうがい薬

酸に対する中和力を緩衝能といいますが、唾液の緩衝能が低い方には、中和作用のある重曹水でうがいする方法あります。
ただし重曹を水に溶かしただけでは味がよくないですが、『オーラルPHバランサー』といううがい薬は、これと同じ効果を持っています。
酸性の飲食物をとった後などに、これで30秒程度ブクブクうがいをすると、お口の中を中和して、歯が溶けにくい状態に戻すことができます。
また、リステリンなどの刺激の強いうがい薬は酸性度が高いため、これらをお使いで酸蝕症の疑いがある方は、オーラルPHバランサーに代えてみてください。
高機能シュガーレスガム・フッ素

酸に対して歯を強化するフッ素は、低濃度で高頻度、また口の中のカルシウムイオンが多いほど効果的なので、フッ素とカルシウムが入った『ポスカ』や『リカルデント』などの高機能シュガーレスガムを毎食後に噛んでいただくと、再石灰化に高い効果があります。
(ただし、ガムを噛み過ぎて歯や顎が痛くなったら、噛む時間を短くしてみてください)
またフッ素洗口や、歯科医院でのフッ素塗布も併用すると効果的です。
歯磨き・歯ぎしりの対策

酸蝕症の方は、食後すぐは口の中の酸性度が高く、歯が柔らかくて削れやすいため、特に酸性の物の飲食後は、3~30分くらい経ってから歯磨きをしてください。ただし、虫歯が多い方は、オーラルPHバランサーでうがいをするか、ポスカなどのシュガーレスガムを噛んで唾液を出して、口の中を中和してから、すぐに磨いてください。
また、酸蝕症の方は、ブラシの毛先が硬いと、歯が削れやすいため、柔らかいものに替えてください。
その他、酸蝕症で歯ぎしりをしていると、歯が急速に削れていくので、夜間の歯ぎしりから歯を保護するためのマウスピース「ナイトガード」を、歯科医院で作ってもらってください。
病気

逆流性食道炎・慢性胃炎などの病気が未治療だったり、ひんぱんに胸やけのする方は、胃酸が口の中に逆流している可能性があるので、内科に受診してみてください。
特に、吐いたり、胃酸が逆流したりした時には、オーラルPHバランサーか水でうがいしてください。食後にシュガーレスガムを噛むのも、唾液が胃酸を洗い流してくれるため、胸やけにも有効です。
また、シェーグレン症候群の場合は、唾液を補助するマウスリンスを使用してみてください。
酸蝕症の検査について
酸蝕症の疑いがある方は、お口をゆすぐだけの簡単な唾液検査で、酸性度や、酸を中和する緩衝能を調べることができます。
検査代1,650円(税込)
ご希望の方はスタッフにお問い合わせください。
※検査前の2時間以内は、飲食・歯磨き・うがいをお控えください。また当日の検査をご希望の方は、ご来院時に受付にお申しつけください。